SSブログ

「国難⇒最貧国化」 の衝撃 [被害想定]

P1_内閣府広報資料「南海トラフ巨大地震編 全体版」(動画)より.JPG
本紙は本年(2018年)1月15日号(No. 178)で近未来防災への想像力をテーマに、「防災不可能性都市」なる造語を用いた。かの「消滅可能性都市」をもじった用語だったが、ここに来て土木学会が巨大災害での長期経済被害推計を行い、いったん巨大災害が起これば日本経済に長期低迷をもたらし「最貧国化にも」との警告をまとめた。その衝撃は果たして、為政者、経済界に伝わるだろうか(上画像は内閣府作成の動画「南海トラフ巨大地震 全体版」より)

■《Bosai Plus》 第188号・2018年06月15日号発行!
同P. 1(「もくじ」付き)へリンク

●巨大災害の最悪想定と対策 被害想定もいずれ風化する?……

 本号巻頭・特別企画では、土木学会が公表した報告書「『国難』をもたらす巨大災害対策についての技術検討報告書」を取り上げました。
 南海トラフ地震で「被害推計(最大)1410兆円」というのは、わが国の国家予算の14年分というセンセーショナルな推計で、土木学会会長のコメント「(発災すれば)最貧国になりかねない」や、同推計を公表した委員会委員の河田惠昭・関西大学特別任命教授の「会社だと赤字で倒産するが、国の場合は滅亡する」という発言も衝撃的なものでした。

 とは言え、もともと南海トラフ巨大地震では最悪死者32万人という国の被害想定がすでにあり、その当時の衝撃はどうなったか、今回の被害推計は、国民にどこまで深刻に受けとめられたか、疑わしいところもあります。被害想定もいずれ風化する……ということでしょうか。
 今回はとくに20年間の経済被害に焦点が当てられているので、現政権の「経済成長戦略」との兼ね合い、そして経済界の受けとめが気になるところ。

                  ○

 本紙は今年の1月15日号(No. 178)で「近未来の防災~防災不可能性都市の克服」と題して、近未来防災への危機感を訴えました(「防災不可能性都市」とは「消滅可能性都市」をもじった本紙の造語です)。
 この特別企画では、超高齢化、地方都市・中山間地の過疎化、限界集落、都市部の空き家増加による“スポンジ化”など、人口動態に関連して新たに浮上する課題は年を追うごとに重みを増しており、そうした社会状況の変化のなかで、南海トラフ巨大地震や首都直下地震、千島海溝“超巨大地震”など、その切迫性が認められる広域大規模災害への対応について、国、日本国民はどれだけ危機感を持っているのか。
 そして私たちは地域防災、自主防災(自助・共助)の視点から、自然災害「防災不可能性都市」続出の可能性にどう対応すればいいのか、と問題提起しました。

 ちなみに超高齢化社会とは「65歳以上の人口の割合が全人口の21%を占めている社会」と定義されているようです。言うまでもなくわが国は2010年にすでに「超高齢化社会」に突入、2025年には約30%、2060年には約40%に達すると見られています。
 報告書が明示した「15年以内に対策を」の15年後は2033年。巷間、南海トラフ巨大地震はこの頃までに発生するという“風説”がありますが、それまでに対策をとなると、まさに待ったなし!の切迫感があります。

                  ○

 NHK・BSプレミアムが先ごろ(3月17日)、「深読み読書会」というシリーズで、小松左京の『日本沈没』を「戦後最大の問題作!?」という番組タイトルで取り上げていました。『日本沈没』は1973年のベストセラーですが、当時私も小松左京の構想力にのめりこみ、その後の2度の映画化作品もおもしろく観ました。

 当初、『日本沈没』はいわゆる“シリアス・SF”だと思っていました。しかし、阪神・淡路大震災や東日本大震災を目撃し、巨大災害想定を知ったいま、たしかにこれは、“戦後最大の問題作”かもしれないと思えます。
 長くなるので『日本沈没』論はやめますが、いまも印象に残り、巨大災害の最悪想定を見聞するいま、改めて思い起こされる箇所があります。それは、日本が沈む、となったとき、国として選択べき対策はなにか、というところ。
 作中では、日本民族の一部がどこかに新しい国をつくる、各地に分散して外国に帰化する、難民として分散する――の3つが挙げられますが、日本社会の“陰のフィクサー”と思われる謎の老人のひと言「なにもせんほうがええ」が耳の奥に残響のように響くのです。

 巨大災害の事前対策を「なにもせんほうがええ」とは行きませんが、現状は「抜本的なことはなにもせんでもええ」とはなっていないか……どうでしょう。

   (M. T. 記)

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。