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大阪府北部の地震と災害リスクへの“嗅覚” [地震]

P1_大阪府北部の地震「推計震度分布図」.jpg
2018年06月18日07時58分大阪府北部で発生したM5.9(速報値)の「推計震度分布図」(気象庁資料より一部トリミングして編集)。気象庁「推計震度分布図」とは、震度5弱以上を観測した地震について、推計震度4以上の範囲を、震度計のない場所も含めて面的に表現示した図で、震度の面的な広がり具合とその形状がわかりやすい。専門家のあいだで、この地震は南海トラフ巨大地震の前兆となる一連の内陸活断層の活動か、との議論が急浮上している

■《Bosai Plus》 第189号・2018年07月01日号発行!
同P. 1(「もくじ」付き)へリンク

●大阪府北部の地震が甦らせたリアルな「21世紀は災害の世紀」

 阪神・淡路大震災以降、防災の世界では災害、とくに巨大災害への緊張感が急激に高まったと思います。
 国は、南海トラフ地震(東海地震、東南海・南海地震等)から首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、中部圏・近畿圏の内陸地震、大規模水害と、専門調査会を次つぎと設けて、想定される巨大災害とその対策をさかんに研究していました。
 当時、防災にかかわった私たちも、国の動きを報じながら、「21世紀は災害の世紀」という防災啓発キャンペーンを打ち出していました。

 こうした巨大災害研究が、東日本大震災というリアルな大規模災害を目の当たりにして劇的な転換を遂げました。それはひと言で言えば、「研究」という机上のシミュレーションから「リアルな最悪事態の想定」へと質的な転換を遂げたということではなかったかと思います。
 「21世紀は災害の世紀」はいま思えば、まだまだ“牧歌的”な表現ではなかったのか。巨大災害は粛々と、と言いますか、刻々と、と言いますか、リアルにその実相を垣間見せ始め、私たちは動物としての本能的な嗅覚で、その不気味な空気感に気づき始めているような……

●「頑丈そうな塀(=正常化の偏見?)に身を寄せる」という錯誤

 6月18日発生の大阪府北部の地震では、ブロック塀の崩壊による児童の犠牲に胸が詰まりましたが、実はその1週間前の6月12日は1978年宮城県沖地震からちょうど40年の災害周年でした。
 1978年宮城県沖地震は、建築基準法の新耐震基準ができたきっかけとなった地震として知られますが、ブロック塀や門柱などの倒壊で多くの死者が、それも子ども・高齢者が多く犠牲になったことも特徴的な地震災害でした。
 そして、宮城県沖地震で崩壊したブロック塀の犠牲になった児童が「頑丈そうな塀などに身を寄せてしまったとみられる」との報告もあるそうです。

 本紙P. 2の写真説明で触れましたが、この災害教訓を宮城県柴田町(しばたまち)ホームページの「地震防災マップ~ブロック塀や石塀の地震対策」は実に的確・簡潔な表現で伝えています。
>>宮城県柴田町:地震防災マップ「ブロック塀や石塀の地震対策」

 いっぽう、大阪府は発災後わずか4日目に、リーフレット「ブロック塀を点検しよう!」を急きょ作成して公開しましたが、こちらはブロック塀の法的な“基準”の説明にとどまっています。
>>大阪府:「ブロック塀を点検しよう!」リーフレットを作成しました

 災害教訓が応急対応・思いつきでは、なかなか心に響きにくい……

 今回のブロック塀崩壊で犠牲になった児童、お年寄りが「頑丈そうだから身を寄せた」のではなかったのか……通学路でこうした悲劇が起こったことに、学校の管理者のみならず保護者、地域住民もまた、リスクへの嗅覚が問われています。
 私たちは、“防災大国”なる驕った意識は反省すべきではないでしょうか。

   (M. T. 記)
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熊本地震から1年 震度7超の激震? [地震]

P1_熊本地震-活断層直上の激震被害.jpg
上写真:熊本地震-活断層直上の激震被害(Photo by M. T., Bosai Plus/2016.05.12.)

■《Bosai Plus》 第160号・2017年04月15日号発行!
同P. 1(「もくじ」付き)へリンク

 本号巻頭企画「熊本地震から1年」は新耐震基準と揺れの増幅の視点から話題を提供。NHKスペシャルが取り上げた「表層地盤」の問題もフォローしました。また、各種団体の防災啓発活動から「木耐協」地域防災プロジェクトと「日本気象協会」のお得感のある防災キャンペーンも。仙台支局発「鉄道復興シリーズ・8」は、避難指示解除に合わせて開通したJR常磐線・小高~浪江間をめぐる話題です……

●熊本地震 「震度7」は実は「震度8」いや「震度9」ではなかったのか……
 「新・新耐震」と「表層地盤リスク」

 本号の巻頭写真は昨年5月の小紙現地取材で撮影したなかからの1カットです。まことに衝撃的な写真ですが、あえて使わせていただきました。被災者の方には改めて心からお見舞いを申し上げます。

 その写真キャプション(説明文)で米国の震度階級に触れ、12段階の最大の震度が「Cataclysmic(地殻の激変・変動)」と表現されていると書きました。
 ただ、こういう指標に「最大」という"上限"がつけられるものなのだろうか……という素朴な疑問があります。

 以前、小紙でも触れましたが、竜巻では「藤田(F)スケール」があります。日本人気象学者・藤田哲也(1920-1998年)博士が米国に定着させた竜巻の規模の指標で、風速と被害状況によるF0~F5の6段階です(現在は「改良藤田スケール」Enhanced Fujita Scale、通称EFスケールとなっていて、日本でも採用)。
 藤田博士のそうした業績はもちろんすばらしいものですが、ここでとくに"さすが"とご紹介したいのは、想定不能の「F6」も設定し、"想定外"をも取り込もうとしたところにあると思います。
 それはまさに、災害の本質を見抜いた科学者の想像力として、高く評価されるのではないでしょうか。米国の、そのような発想での地震の揺れへの想像力が、「Cataclysmic(地殻の激変・変動)」になったのではないかと思うのです。

 いっぽう、日本の「震度7」はどんな揺れが、そしてどこまでが「震度7」なのかよくわかりません。「震度7」以上はどんな揺れでも「7」なのか……今回、NHKスペシャルに触発されて取り上げた「表層地盤」で増幅する揺れについて、防災科学技術研究所の研究者のみなさんは、震度7以上(震度7の2倍クラスの揺れ?)を想定しているのではないでしょうか。

 そうであれば、"想定震度8"とか"想定震度10"とか、震度7の限界を押し広げる揺れの新しい指標・表現も必要になるのでは……

 地震でマグニチュード(M)10は起こり得るかどうかというマジメな議論もあります。M10は東日本大震災のM9の30倍規模で、専門家は起こり得る、としています。自然災害ではそれこそ、地球壊滅的な最大規模までも想定しておかないと、次から次へと起こる想定外に対応できないのではないでしょうか。

●忙中閑話(でもなく、マジメな話……)
 想定外への想像力のウォーミングアップ――
>>朝日新聞:小惑星衝突危機、そのとき人類は 100m級でも大被害
(2017.04.02.)
 《新たな小惑星が見つかった。国際天文学連合は「2017PDC」と命名し、軌道計算から、地球に衝突する可能性がある「潜在的に危険」と分類された。NASA(米航空宇宙局)とESA(欧州宇宙機関)は、10年後に衝突の可能性があると推定。直径は100~250mとみられる……

 *専門家が小惑星や彗星による地球衝突の脅威に関して議論する2年に1度開催の国際会議「2017 5th IAA プラネタリー・ディフェンス・コンフェレンス(Planetary Defense Conference)」が、5月15日~19日、日本科学未来館で開催されます。

>>MITテクノロジーレビュー:ダラス市民、ハッキングによる防災サイレンの爆音で眠れず
(2017.04.11.)
 ダラス市の警報システムがハッキングされ、ハリケーン到来を知らせる緊急サイレンが深夜に鳴り響いた。重大な被害がなかった一方、サイバー・セキュリティは都市整備の重要要素になった……

(M. T. 記)
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