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「稲むらの火」 日本遺産に [災害教訓]

P1_英語版「稲むらの火の館」パンフレットより.jpg
和歌山県広川町は2007年4月、濱ロ梧陵記念館と津波防災教育センターからなる「稲むらの火の館」を創設し、濱ロ梧陵(はまぐち・ごりょう)の津波防災に向けての偉業と精神、教訓を学び受け継ぐ。上図版は英語版「稲むらの火の館」(Hamaguchi Goryo Archives Tsunami Educational Center)パンフレットより(一部)。同館の案内パンフレットは日本語版、英語版のほか、韓国語版、簡体字・繁体字(中国語)版、インドネシア語版の各種を揃え、国際的な津波防災の啓発拠点ともなっている


■《Bosai Plus》 第187号・2018年06月01日号発行!
同P. 1(「もくじ」付き)へリンク

●「稲むらの火」は“世界的な災害伝承遺産”

 文化庁から2018年度「日本遺産(Japan Heritage)」認定結果の発表が5月24日にあり、和歌山県広川町が「『百世の安堵(あんど)』~津波と復興の記憶が生きる広川の防災遺産~」ということで選ばれました。
 「地域の歴史的魅力や特色を通じてわが国の文化・伝統を語る“ストーリー”」があるかどうかが認定の要件で、文化財そのものが認定対象ではないというところが“ミソ”のようです。

 「稲むらの火」で知られる広川の防災遺産は、防災にかかわる私たちにとっては“聖地”のようなもの。とくに東日本大震災後は、「津波対策の推進に関する法律」の制定を機に、「稲むらの火」の教訓伝承を生んだ安政南海地震の発生日・11月5日が「津波防災の日」と定められ、国連「世界津波の日」となり、それらの記念切手(82円)が発行され、さらには「濱口梧陵国際賞」が設けられるなど、世界的な“遺産”の広がりに連なっています。

 そういった国際化の意味合いも含めて、本号巻頭企画のカット図版をあえて「稲むらの火の館」ガイドの英語版にしました。

●「東京国際消防防災展2018」と本紙校了日が“バッティング”

 本号は定期刊行物ですので発行日を動かせません。5月31日~6月3日開催「東京国際消防防災展2018」(同時開催「2018防災産業展 in 東京」)はまさに、本号の原稿締切りと発行日に“バッティング”(日程がかぶる)してしまい、残念ながらそれに対応する機動力がありませんので、「空飛ぶ消防」(本紙P. 4)などは広報資料からの記事起こしになってしまいました。

 また、内閣府(防災担当)から5月31日に、手引書「水害・土砂災害から家族と地域を守るには」が公表されたのですが、本号の「土砂災害防止月間」(P. 3-4)の記事本文に反映させることができませんでした(カット図版とその説明にはすべり込みで入れました)。

 「手引書」は、とくに地域で防災活動をされている自主防災や防災士のみなさまを対象に編集されていますので、土砂災害企画でその詳しい内容を紹介できなかったことは、編集者としてまことに口惜しい事態。
 でも、いずれ後日、“切り口”を変えて改めて取り上げさせていただきます。

●話題を変えて……閑話休題

 やはり月末のあわただしいなか、5月30日付け朝日新聞コラム「ことばの広場~校閲センターから」に、「右と左、どちらが優位」という記事がありました。左利きの編集者(私)には気になる記事でしたので、参考に供します。
>>朝日新聞:(ことばの広場 校閲センターから)「右」と「左」、どちらが優位(2018年5月30日)

   (M. T. 記)
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「災害史探訪」を再訪する [災害教訓]

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上写真:元NHK解説委員で中央防災会議専門調査会座長・委員などを歴任、市民の防災啓発や防災士育成・指導で知られる伊藤和明氏による最新三部作。三部作はそれぞれ新書版で「内陸直下地震編」(定価900円+税)、「海域の地震・津波編」(1100円+税)、「火山編」(1100円+税)の構成。伊藤氏がとくに自然災害の温故知新として論考を深めてきたわが国の地震・津波、火山噴火の災害史をわかりやすくコンパクトに解説・評価、今後想定される災害への警告とともに、21世紀の防災への新たな視点、読み解くべき教訓が示されている


■《Bosai Plus》 第176号・2017年12月15日号発行!
同P. 1(「もくじ」付き)へリンク

●祝!「災害史探訪 三部作」 そして“災害史探訪”の意義を考えてみた……

 本号特別企画は、みなさまおなじみの伊藤和明先生・著「災害史探訪 三部作」上梓にちなみ、7年半という異例の長期にわたって先生が座長を務め、25の災害報告書の成果に結実した中央防災会議「災害教訓の継承専門調査会」を“再訪”しました。

 今年2017年は実は、関東大震災の流言による「朝鮮人虐殺」で“摩訶不思議”な話題が2つ重なり、「災害教訓の継承」の関東大震災報告書に別な方向からスポットライトが当てられるということがありました。
 ひとつは朝日新聞4月19日付けの「『朝鮮人虐殺』含む災害教訓報告書、内閣府ホームページから削除」という記事で、もうひとつは関東大震災から94年の今年9月1日の、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典に小池百合子都知事が慣例だった追悼文送付をとりやめたという件です。

 ここではその詳細に立ち入りませんが、前者(朝日新聞記事)の経緯については本紙5月1日号(No. 161)特別企画「いまだから『流言』への備え」で触れています。北朝鮮の動向をめぐって朝鮮半島の緊張が高まり、“戦前”的な不穏な高揚感と空気感が漂うなかで(また“忖度問題”のさなかともあって)、魑魅魍魎の気配も感じられた一件でした。
 小紙は朝日新聞に真偽のほどを問い合わせたのですが「誤報ではない」と断言され、結局、真相ははわからずじまい……

 伊藤先生の三部作のひとつ「災害史探訪~海域の地震・津波編」に関東大震災の項があり、先生は「流言とそれが原因となった大虐殺は、日本の国辱といってもいい事件だった」としています。

 私はこの“大虐殺”について実は、余計な心配をしています。虐殺に主にかかわったのは当時の自警団だったわけですが、彼らはいまで言う自治会や自主防災のような市民たちではなかったのか、と。私たちは大丈夫だろうか、と。
 “災害史探訪”の意義はまさに、こういう問いを生むところにもあるのではないでしょうか。

●年末のご挨拶 よいお年を! 新春第1号は 1月4日配信です

 本年も押し詰まりました。本号が本年最後の配信となります。
 新しい年の第1号(1月1日号/No. 177)は、1月4日の配信となりますので、ご了承ください。
 本年の本紙へのご支援、ご鞭撻、ありがとうございました。
 みなさまの新しい年のご多幸を、心よりお祈り申し上げます。

   (M. T. 記)
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再び、関東大震災の「流言飛語“虐殺”」 [災害教訓]

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上画像:「災害教訓の継承-1923関東大震災」より第4章・第2節「殺傷事件の発生」より「流言の事例」

【 現代の自主防災組織も銘記すべき悪夢――「関東大震災朝鮮人虐殺」 】

●災害犠牲者とは 都知事の「判断」と「事実のゆがみ」

 本紙《Bosai Plus》は本年(2017年)5月1日号(No. 161)特別企画で「流言」を取り上げました。そのきっかけは、当時(から現在に至る)、朝鮮半島の緊張感の高まりと同時進行した報道の真偽問題、すなわち朝日新聞の「『朝鮮人虐殺』含む災害教訓報告書、内閣府HPから削除」という記事にありました。
 朝日新聞の記事に対して内閣府が真っ向から反論、記事内容に抗議することを示唆(産経新聞報道より)していたのですが、内閣府から朝日新聞への「抗議」はないまま、また朝日新聞のフォロー記事もないまま、うやむやになってしまったようです。
 本紙はこの件の推移について「事実のゆがみ」を正してほしいとしました。
>>《Bosai Plus》:災害・武力衝突下の「流言飛語」 危険な飛来物
>>朝日新聞:「朝鮮人虐殺」含む災害教訓報告書、内閣府HPから削除
(2017.04.19.)
>>産経新聞:内閣府、朝日記事を否定 ホームページの「朝鮮人虐殺」削除報道、抗議も検討
(2017.04.20.)

 その4カ月後の8月末、小池百合子・東京都知事が、例年都知事から送られていた関東大震災の朝鮮人犠牲者の追悼式への追悼文を今回は送らないという“判断の是非”をメディアが取り上げました。
 小池都知事は記者会見で「私は今回は、(民族差別という観点より)すべての方がたへの法要を行っていきたいという意味から、特別な形での追悼文を提出をすることは控えさせていただいた」と述べています。
>>東京都:知事記者会見(8月25日)

 小池都知事のこの判断に対して、疑問の声や抗議の声があがりました。関東大震災時の民族的偏見からの暴力による被害者(国の関東大震災の教訓報告書ではこの暴力・殺人を「虐殺という表現が妥当する例が多かった」としています)を“一般的な災害犠牲者”とみなすことへの疑問です。
 家屋倒壊やそれによって起こった火災で亡くなった災害犠牲者……また、現代では災害関連死も災害死にカウントされますが、このような災害死と、暴力による死をひとくくりにして災害死と言えるのでしょうか。

●数の真偽の問題ではない 起こった事実を直視

 政治的な立場とは関係ありません。それは防災教訓として教科書でも取り上げる「災害時の流言・デマ」による被害だとしても、暴力がもたらした死は、災害死一般と一線が画され、なおかつ最悪の災害教訓として銘記すべきものでしょう。そして、行政のトップこそがその反省・自戒の認識を持たなければならないと思います。
 “日本民族が他民族を虐げた”……その過去を直視することは辛いことですが、それを無視、あるいは否定することは「災害教訓の風化」どころの話ではなく、むしろ意図的にこれを否定する政治的な“企(くわだ)て”と言わざるを得ません。

 小池都知事の判断に政治的な背景があるかどうかは知りませんが、報道では、くだんの朝鮮人犠牲者の追悼式が“虐殺”の朝鮮人犠牲者数を6千余としていることへの反発(圧力?)もあるようです。
 国の報告書では、震災全体の死者・行方不明者約10万5千人のうち殺害による死者数を1~数%と推計しています。もちろん、数値の精度は重要ですが、真偽の問題ではありません。起こった事実こそが問題なわけです。

●地域防災の担い手が“自警団”? 自助・共助が裏返ると……

 一人ひとりの命としてみるとき、現代の私たち市民にも深刻な反省を迫ります。時代環境はあるとしても、戦時下ではない日本国内で、災害で誘発された殺傷行為で多数の外国人(主に朝鮮人、中国人ほか、そして彼らに間違えられた日本人も!)が犠牲となる“虐殺” が行われたことは否定しようもありません。
 しかも当時の官憲以上に積極的に直接手を下したのは、自警団など市井の市民だったと記録は物語っています。私たちのついひと世代前の顔なじみの人たちだったのです。

 演出家・俳優として知られた千田是也(1904―1994年)のエピソード、「(発災時)朝鮮人が襲ってくるからと夜警に引っ張り出されて東京千駄ヶ谷を歩いていたら自警団に遭遇し、朝鮮人と間違えられて『歴代天皇名を言え』と詰め寄られた経験から、自らのペンネームを千田(千駄ヶ谷で)是也(コリヤ)にした」が知られています。
 見回りグループ同士が互いに疑心暗鬼にとらわれるという、まさに流言飛語を風刺画に描いたようなシーンが各地で展開したようです。

 当時の自警団は、いまで言えば、地域防災の担い手である消防団員や防災防犯まちづくりの自主防災会、自治会などにあたり、いわば私たちの“先輩たち”です。関東大震災での流言飛語に端を発する“虐殺行為”など現代はあり得ないと一蹴するのは当然としても、かつて起こったという事実から目をそむけるわけにはいきません。
 そして、実は私たちの心の暗部に潜むかもしれない民族意識の負の面が、災害という非日常環境下の不安心理とともに表出した災害教訓として、また「自助・共助の裏返し」という意味合いでも、“虐殺”は、防災にかかわる私たちにとっても深刻で重要な教訓のひとつになります。
 
 都知事は、百歩譲って、広い意味で災害を引き金とする“関連死”だと言いたかったのかもしれませんが、関東大震災における朝鮮人犠牲者は明らかに人為災害、あえて言えば“災害にかこつけた殺人”にほかなりません。だからこそ私たちはこれを最悪の災害教訓として永く心に刻まなければならないと思います。

 M. T. 記

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いまだから(いまのうちに)「流言」への備え [災害教訓]

P1_吉田初三郎「関東震災全域鳥瞰図」の一部.jpg
上図は、大阪朝日新聞・大正13年9月15日付録から吉田初三郎「関東震災全域鳥瞰図」の一部(「災害教訓の継承~災害史に学ぶ」より)。1923年関東大震災は死者10万を超える大災害だった。その混乱のなかで流言飛語によって多くの朝鮮人など外国人殺傷事件が発生した。その教訓は現代にも活かされるべきものとしてある。

■《Bosai Plus》 第161号・2017年05月01日号発行!
同P. 1(「もくじ」付き)へリンク

 国際紛争の結果としての戦闘行為・戦争状態を「災害」の範疇に入れていいかどうかは議論のあるところですが、武力攻撃やテロの危険から身を守ること(国の視点では「国民保護」)は“防災”だと言えます。本号では災害時の、そして国際紛争下での「流言リスク」、ミサイル落下時の備えを取り上げました。また「全国地震動地図 2017」の紹介、仙台発「次世代塾」の話題、ほか情報満載です……


●時代のキーワード?――「流言」、「フェイクニュース」、「ゆがむ事実」

 本号では、特別企画で「流言」を取り上げ、「話題1」で北朝鮮の挑発がらみの「武力攻撃~国民保護~Jアラート」を取り上げました。
 「流言」では、関東大震災の重要な災害教訓――流言から誘発された“朝鮮人虐殺”を振り返り、現代日本での武力攻撃下の最悪想定(朝鮮半島での武力衝突、あるいは日本が弾道ミサイルの攻撃を受けたとき)で、日本在留外国人あるいは社会的弱者の流言被害の可能性を想定内とすべきではないかと課題提起しました。
 防災の視点からは、流言は“人為的な災害”であり、その意味でよりシリアスな課題提起ではないかと思います。

 本文で詳しく触れていますが、今回の本紙企画は、朝鮮半島の緊張感の高まりと同時進行した報道の真偽問題、すなわち朝日新聞の「『朝鮮人虐殺』含む災害教訓報告書、内閣府HPから削除」という記事が大きなきっかけになりました。
 というのも、「災害教訓の継承」については、中央防災会議専門調査会発足当初から報告書とりまとめまで、その経緯・動向を追っただけに、本紙の思い入れも背景にあったのです。

 いっぽう、直近の世界・日本動向まで大きく視点を広げると、トランプ大統領の話題や森友学園問題、東京都の中央卸売市場移転問題などともからんで、“フェイクニュース”(偽報道)あるいは「ゆがむ事実」(朝日新聞の現在進行中の特別記事シリーズタイトル)がこの時代を切り取るキーワードになりつつあるように見えたからです。まさに地下水脈のようにつながって……

 あまり話を広げると収拾がつかなくなるのでやめますが、朝日新聞の「災害教訓継承報告書」からの「“朝鮮人虐殺”削除」の報道と、これについての内閣府の「抗議する」との真っ向からの反論との“落としどころ”はどこなのでしょうか。フォロー記事はなく、内閣府から朝日新聞への正式な「抗議」もないようです。
 このままうやむやなまま、どちらが本当のことを言っているのか知りたい読者をほうっておいて、朝日新聞も内閣府もほおっかむりなのでしょうか。
 「事実のゆがみ」、「事実を覆う靄(もや)」を正してほしいところです。

●話題を変えて――「避難所」の読みは「ひなんしょ」?「ひなんじょ」?
 西と東で異なる傾向が……
>>朝日新聞:(ことばの広場)ひなんしょ?ひなんじょ?

●話題を変えて――5月から新たに「STOP! 熱中症キャンペーン」
 個人ごとの熱中症の危険度を簡易的に診断できる“コンテンツ”もできたようで。
>>厚生労働省:STOP!熱中症 クールワークキャンペーン
>>「熱中症セルフチェック」サイト

   (M. T. 記)

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